初詣


元日は一年中の唯一の休日。土日も朝も晩もなくただただ働いて一年を過ごすが、この日だけは全く仕事をしない。この貴重な日をどうしようか、いつも事前に考えては時間だけが過ぎ、あまつさえ気のゆるみが体調の不良を引き起こし、結局寝ながら過ごすのが常だ。そして今年も同じように腹痛に見舞われ、大半の時間を寝て過ごした。
それでも元日に嫁の実家にいき新年の挨拶をすませ、熊野大社に初詣に参る。本当は地元の神社の氏子なのでそちらに参るのが筋だが、結婚して五年以上経って熊野大社にでもいってみようやとお参りした直後に嫁の具合が悪くなり、その後診断の結果長男に恵まれたことがあり、それは偶然の結果ではあるのだが、それ以来、初詣はもちろん、折りにつけ熊野大社へ参詣するのが我が家のしきたりである。
それでも出雲一宮だけはあって、天気が悪いにもかかわらず手前1kmは車の渋滞ができている。我が家から自転車なら30分のところ、自動車で同じほどをかけて着くと、参詣の人は次々とある。参道にはいくつか出店もあってそれなりの賑わいであった。みぞれ交じりの雪が降る中、拝殿について賽銭を投げ、まだお参りのなんたるかを知らない下の子に「今年も健康でありますようにとお願いするんだよ」というと、そのまま声を上げてお祈りするものだから周囲の人に笑われたりしていた。しかしこうして、家族が今年も迎えられたことの感謝を心にして、ただひたすらに参詣した。
暗闇に沈む境内と人々の賑わいがなんとなく不釣り合いに思うが、正月とはそういう不思議な感覚であっていいのだと思う。