救急外来

コンピュータが起動しないことでへとへとになり、万策尽きて今日はもう諦めようと自宅に戻ったら、次男が階段から落ちたという。
見れば右目の上、まつげのあたりがざっくりと割れ、血が噴き出している。他に様子がおかしいところがないのは幸いだが、目の上の傷はちょっと深い。すでに夜になっているので、市立病院の救急外来に連れて行った。
今日はおだやかな日らしく、救急外来に待ちの患者がいなかったので、最優先で診てもらえた。やはり傷が深いとの判断で、縫合することに。2歳の子供にはかわいそうだが、仕方ない。担当医と看護師、研修医に両親と大人総掛かりで子供を押さえつけて、局部麻酔の注射を打ち、曲がった針につけた糸で傷口を縫い合わせていく。ほんの三カ所ほどだったが、さぞつらかったろうなあ。終わったら、泣き疲れてぐったりしていた。
帰宅してよいとのことなので、とっぷりと暮れた夜の町を自動車で帰った。
帰りの車はみんな無言だった。僕は日中のこともあってへとへとだったし、妻は自分が目を離したばかりにと自責の念もあったかもしれない。次男は術後で呆然、長男は病院での治療を目の当たりにして言葉を失うといった感じだ。それでも、何か満足している自分を見つけてちょっと嬉しくなる。
何でなんだろう。ああきっと、もうすぐ4歳の長男が、一人待合いで荷物番をして待っていてくれたのが嬉しかったのだ。普段なら次男をかまうとぼくもぼくもと甘える長男が、今日はしっかり役を果たしてくれた、それが満足だった。いつの間にか子供は成長しているんだな。
コンピュータが壊れ、次男はケガを負ったさんざんな一日の中にも、ちょっとした満足が見つけられて、それで今日一日無事終わればよしとしよう。